2017年3月13日 その4
2017年3月13日 その4
2017年3月13日(月)
「サイバーセキュリティはみんなで参加」とセキュリティ人材の評価と私たちの社会の在り方
新潟大学大学院
法学部 教授 田中 幸弘
だからこそだ。現場や中堅でセキュリティにかかわっておられる主体が声を上げるあるいは身をもって行動で示す胎動がさらに本格的に始まるのではないかと思っている。
それだけではない。経営者層からも環境を変える努力が率先励行されていく動きが始まっているような気がする。
その意味では例えば、株式会社ラックの代表取締役社長を務めることになった西本逸郎氏が私個人的には注目されるところである。
彼は現場を知りすぎるほど知りすぎているところがあり、そこから今回の来季の社長就任という形に至っている。彼のような人物が、日本のセキュリティ関連の人材の人手不足感を踏まえた上で、能力の発見の重要性、然るべき人材には然るべき賃金の水準をという施策を構想・実施し、日本のセキュリティ関連の人材市場を考える際のベンチマークといい得るような組織づくりをけん引してはもらえないものだろうか。
安倍内閣における経済政策の中でも国民の賃金水準のかさ上げも施策の中に入っている昨今の状況に鑑みれば、本来であれば、重点的に傾斜生産方式的に(言い方が少し古いかw)、サイバーセキュリティの分野・IT関連の分野の人材の評価基準の適正化も含めて、所得水準を向上させることにより国内消費を増やし支えるという流れにぴったりの領域が実は先進的な専門性を必要とする人材で構成されることが期待されるセキュリティ業界ということになるのではないかと常々考えてきたところがあるのであるが、この点は金融界においても同様のことが妥当するように思っている。
だが、眼前に広がる地平という意味でも近未来に東京オリンピックが開催され実践対応が必要とされる状況においては、やはりこの領域の担い手にすがらざるを得ないのは事実ではないかと思うのである。その意味ではこの領域の担い手の方々のキャリアプラン、キャリアパス、を考えやすいように社会的にも注目したうえで適正な労働市場が機能するような環境整備の視点は、経営者サイドでも共有されるべき問題として、そして関連する各領域間でも共有することが必要な問題として、統合が必要な状況なのではないかと考えている次第である。
その意味では、業界としてのセキュリティ業界の担い手の賃金の底上げが国民経済の一部を先導するというところまで進軍ラッパを吹く主体がいても何ら不思議はないように私は思うのである。
では、このような環境の中で国ベース・自治体ベース・省庁間ベースでの情報共有と人材共有、あるいは統合的な共有のプラットフォームはどのようにあるべきなのかという問題も検討する必要があるように思われる。(つづく)