2024年サイバーセキュリティ月間の寄稿コラム

公的研究機関だからこそ担えるNICTの役割

国立研究開発法人情報通信研究機構 執行役
サイバーセキュリティ研究所長
盛合 志帆

1.お仕事の内容を教えてください。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)において、戦略的に進めるべき4つの研究領域の一つである『サイバーセキュリティ』の研究開発に取り組んでいます。サイバーセキュリティ研究所では基礎研究から社会実装、人材育成まで幅広く推進しており、研究所長としてこれらの活動が円滑に進むよう心を砕いています。また、執行役としては、NICT全体のダイバーシティ推進に取り組んでいます。

2.現在のお仕事の魅力、やりがいはなんですか?

 近年の不安定な国際情勢等を背景に、サイバーセキュリティ対応能力向上は国を挙げた喫緊の課題として、ますます重要になってきています。NICTは情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関として、政府の方針を踏まえ、サイバーセキュリティに関する研究開発から、人材育成、産学官連携拠点形成、IoT機器の調査等を実施しており、これらの取組によって直接、社会的な要請に応えられることに大変やりがいを感じます。NICTのサイバーセキュリティ研究所はこれらの取組を推進できる優秀な人材に恵まれており、ここ数年、毎年チャレンジングな要請が続いていますが、苦労しながらも一緒に乗り越え、皆さんの努力と成長を大変心強く、頼もしく感じています。

3.難しい点、苦労しているポイントを教えてください。

 ここ数年、国の補正予算等で実施すべき緊急度の高い業務が続いており、限られた人的リソースで確実に実施する必要があることから、気が抜けない日々が続いています。多くの職員にとって高負荷の状況が継続していることも心配の種です。より多くの人材を確保できればと思うのですが、サイバーセキュリティ人材は民間企業においても需要が高いため、人材確保に苦労しています。

4.現在のお仕事に就いたきっかけ、経緯を教えてください。

 学部卒でNTTの研究職として採用頂き、配属されたのが暗号の研究室でした。それから30年以上、セキュリティの研究開発に携わっています。初めは暗号解読の研究に携わり、新しい解読結果を出しては論文を書き、国際会議で発表してというのが楽しかったのですが、その後、米国政府標準暗号の候補暗号を設計してコンペに参加したり、国産の新暗号を開発すると、それをどうやって世の中に普及させるかに関心が移り、転職のきっかけとなりました。転職先のソニー・コンピュータエンタテインメントではPlayStationシリーズの設計・開発に携わり、暗号技術を実際に製品に組み込む経験や、自分が関わった製品が多くの人の手に渡る醍醐味を経験することができました。ただ、製品・サービスには安心して使用することのできる信頼性の高い「枯れた技術」が使われる一方、世界的には暗号・セキュリティ技術は日進月歩で進んでおり、研究者として焦りを感じていました。その後、自分が一生身を置くべきは最先端の技術を創り続ける研究開発だと決心し、製品開発から研究開発の方に戻りました。さらにNICTに移ったのは、セキュリティ技術は一企業だけでやるよりも国としてやれること、やるべきことがますます増えてくると思ったからです。

5.最後に、コラムを読んだ方にメッセージをお願いします。

 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、サイバーセキュリティは一組織だけで達成できるものではなく、NICTには中立的な公的研究機関だからこそ担える大きな役割があると感じています。そしてサイバーセキュリティは欧米やアジア各国では多くの女性が活躍している分野でもあります。女性も含めて、多くのサイバーセキュリティ人材を育てていけるよう、引き続き尽力してまいります。サイバーセキュリティに興味があるけれど、どんなふうに学んだらいいのか分からない、と思っておられる若手の皆さん、NICTでは25歳以下の若手を対象に、セキュリティイノベーターを育てる「SecHack365」を毎年実施しています。ぜひチャレンジしてみませんか。

    若手セキュリティイノベーター育成プログラム「SecHack365」
    https://sechack365.nict.go.jp/
    SecHac365について(2023年サイバーセキュリティ月間 NICT大畑和也さんのコラム)

SecHack365 成果発表会の様子