2018年2月1日

2018年2月1日

2018年2月1日(木) 

社会を変革するITを利活用する皆様とともにサイバーセキュリティの取り組みを!

 内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター
 副センター長/内閣審議官 三角 育生

 
 最近、AI (artificial intelligence)やロボットに関することが頻繁に話題になります。自動走行の実証実験などが進み、また、いわゆるAIスピーカーなどが身近な商品となってきていることもその理由にあるでしょう。そして、このような先端技術の恩恵は計り知れないものがあると思います。
 こうした先端技術との私自身の関わり合いについては、35年程前の学生時代に遡りますが、AIとロボティクスの研究室にいたのがはじまりです。その研究室では、いかに人の創造的な活動をAIなどにより自動化するかなどの研究が行われていました。具体的には、ロボットを使って、原発などの極限的な環境下でのメンテナンスをいかに自動化するか、という研究をしていました。複雑な巨大システムにおいて、障害物をうまく認識して回避し、人に代わって自動診断・保守をすることが目的でした。当時、社会的には、AIについては、エキスパートシステムなどが論じられていたように思いますが、これは、専門家の知識をどうルール化して自動化するかなどが課題だったと記憶しています。AIとロボットのリンケージもまだあまりなかった時代でした。
 その後、これらの分野の研究開発・発展には目覚ましいものがあり、例えば、ディープラーニングなどはその筆頭に挙げられます。ビッグデータ、画像などから潜在的特徴をとらえて自ら学習してしまうテクノロジー、これらがグローバルなネットワークの中で圧倒的な計算能力の下で利活用されるのですから、上述のような課題は吹き飛んでしまうわけです。社会を変革するポテンシャルもますます高まってきています。一方、AIでは、ビッグデータのみならず、超音波など人間には把握・感知できないインプットから、結論が導き出されるわけですから、これが悪用されれば、尋常な手段では人が対処するのが困難になりかねません。
 新たなテクノロジーは、社会的に根付き、社会的に課題が認識され、その課題が社会的に克服までに一定の時間がかかります。馬車から自動車に移行し社会的に交通安全の取り組みが進むまで長い時間がかかりました。航空機も事故のたびに原因調査がなされ、ルールの見直しや技術的対策が講じられてきています。ITの分野でも同様です。特にITの分野ではAIをはじめ、様々な技術が次々と早いテンポで開発され、社会的に浸透していきますので、社会的課題の認識と、社会的な取り組みは、ひとりひとりの利用者がしっかりと進め続けていくことが大切です。新しい技術の利活用に対して、恐れるのではなく、しっかりと課題を認識して、対応に取り組んでいくことが重要です。
 今年のサイバーセキュリティ月間では、こうしたAIなどの先端技術が社会を変革していくことにともない、サイバーセキュリティの課題を改めて認識し、ひとりひとりが、身の回りのことからで結構ですので、サイバーセキュリティの取り組みをしていただきたい、そういう思いで、できるだけ多くの皆さまにご賛同いただき、普及啓発活動を行っていく予定です。一人でも多くの方に、興味を持っていただければ幸いです。
 

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