2017年3月16日

2017年3月16日

2017年3月16日(木)

タダほど怖いものはない?!

一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター
間仁田 裕美

 

○ 「水と安全はタダ」?
 世界の中でとても治安のよい日本では、そう思っている人が多くいるかもしれません。けれども、例えば海外旅行中に、鞄を置いたまま買い物をして鞄を盗まれてしまった人やお尻のポケットに財布を入れていてスリにあってしまった人もいるかもしれません。世界には日本と全く違う環境がたくさんあり、より様々な人がいて、そして日本人は裕福だと思われている、そうすると犯罪の被害にあう機会が多くなってしまうことも考えられます。誰しも犯罪被害にあいたくはないですから、海外では、周囲に怪しい人がいないか普段より気を使うなどして安全対策を講じる人も多いのではないでしょうか。
 
○ 世界の犯罪者から狙われている?
 さてみなさんが毎日使っているスマートフォンやパソコンは、インターネットという目には見えない世界につながっています。普段メールやメッセージをやりとりしている家族や友人は身の回りにいて、特定の人としかつながっていないように感じるかもしれませんが、このサイバー空間という世界は、世界中のコンピュータとつながっていて、海外の友人や取引相手とも瞬時に連絡をとることができるとても便利なネットワークです。
 でも、世界とつながっているということは、世界のどこかにいる犯罪者もこのサイバー空間に存在しているということで、スマートフォンやパソコンから情報を抜き出して、お金をだまし取ってやろうとあなたを狙っているのです。自分が狙われるわけがない、そうでしょうか?警察庁@police の定点観測結果を読み解くと、インターネットにつながっているコンピュータには実際に一日で1,000 件以上もの不審なアクセスがあるということが分かります。世界の犯罪者が、使える情報を持っていそうな人、お金のありそうな人を狙っている中で、日本人は裕福だと世界の人が思っているのです。つまり、サイバー空間では世界中の犯罪者があなたのコンピュータを狙っているかもしれません。
 
○ セキュリティって面倒なもの?
 では、インターネットは怖いから使わない方がいいのでしょうか?もちろんそんなことはありません。包丁は危ないから一生使いません、という人がいないのと同じで、現代を生きる私たちは、生活を便利にするインターネットを使いこなしていかなくてはなりません。包丁を使うときは指を切らないように注意しますが、インターネットを利用するときには何に注意すべきなのでしょうか?コンピュータには、包丁よりもできることがたくさんあるぶん、気を付けなければいけないこともたくさんあります。
 コンピュータもインターネット技術も日々進歩していますが、残念ながら、これを悪用しようとする犯罪者の手口も日々巧妙化しています。犯罪被害にあわないための対策は、一度実施すればそれでよいというわけではなく、次々に登場する新しいサービスや新たな犯罪手口に合わせたセキュリティ対策について、常に情報を収集し、必要な対策を取り入れていく必要があります。海外旅行に行くときに安全対策に気を付けるのと同じように、インターネットの世界を行き抜くためには利用者一人ひとりがセキュリティ対策に意識を向けなければならないのです。
 でもセキュリティって面倒だなぁ、そう思っている方もいると思います。誰でも面倒なことはやりたくないものです。セキュリティって知れば知るほど楽しいもの、みなさんにそう思ってもらえるように努めていくことが、我々セキュリティに携っている者の使命と考えています。私は今、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)というところで、産業界、法執行機関、学術機関がいかに連携してサイバー犯罪の実態を解明し、その脅威を特定・軽減・無効化できるかということに取り組んでいます。まだまだ道半ばではありますが「楽しいセキュリティ」のため、楽しいセキュリティの仲間たちと頑張っていきたいと思います!
 
○ インターネットを安全に使うには?
 最後に、インターネット利用で何に気を付けるべきかについて、一つ具体例を取り上げたいと思います。
 検索サービス、フリーメール、オンラインショッピング、インターネットオークション、オンラインゲーム、学習アプリなど、インターネット上では様々な便利な無料サービスが提供されています。これらのサービスは本当に無料なのでしょうか?実はこれらのサービスのほとんどは広告や有料のオプションサービスなどによる収益で成り立っています。働く人は無収入では暮らしていけないのですから、サービスを提供するために働いている人がいる以上、ほとんどのサービスは収益を得る仕組みを持っています。
 ここで注意しなければならないのは、広告や有料オプションもないのに完全無料をうたっているサービスに対しては、どのように収益を得ているのかを考えてみる必要があるということです。サービスを利用する人の情報(どのような趣味思考があるのか、どのような買い物をするのかなど)を得て、別のサービスや商品販売に活用するというビジネスもありますので、そのサービスを利用することによって、どのような情報がサービス提供者に送信されて利用されるのかについて、予め確認しておくことが重要です。さらには、犯罪者がサービス提供を装って、情報を盗み取ったり、不法行為にコンピュータを利用しようとしているような場合もあります。
 インターネット上のサービスは何でも無料に見えますが、色々なサービスを利用する際には、「タダほど怖いものはない」、この言葉を思い出してみてください。
 

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