2017年2月13日

2017年2月13日

2017年2月13日(月)

社長になってみませんか?

(株)ベネッセインフォシェル
 代表取締役社長 丸山 司郎

   

1.社長の世間相場
 「あなたは、社長になりたいと思いますか」

 

 私が子供の頃、当時の大人たちが優秀な子どもに使う褒め言葉として、「末は博士か大臣か」というものがあり、別バージョンとして「末は社長か大臣か」という表現もありました。これは高度経済成長の中、自分の実力で立身出世するということが、一つの目標になっていた時代の将来なってほしい期待像の表れでした。

 

 先日のニュース記事で、「子供たちの将来の夢」のアンケート調査結果(※1)があり、「学者・博士」が、前年の8位から2位にジャンプアップしたとありましたが、残念ながら、この順位の中には、過去も含めて大臣や社長という夢はありませんでした。面白いことに、1990年頃に、サラリーマンが9位に入ってました。

 

 果たして今の日本で、特にIT技術者やセキュリティ技術者の中で、大臣や、社長を目指して日々研鑽している人がどのくらいいるでしょうか。

 

2.社長になって
 なんでこんなお話をするかと言いますと、私は今までラックというセキュリティベンダーで働いていたのですが、昨年6月に現職の会社の社長になったからです。

 

  よく、セキュリティ技術者から社長になった理由を聞かれるのですが、お金や出世が動機ではなく、正直、自分で社長職を望んだという訳でもなく、「望んでくれる人がいて、自分が役に立つのなら、なんとかしてあげたい」という単純な思いから、お引き受けすることになった次第です。

 

 社長という役職になって、今までとは違う立場で世の中を見ることになり、考え方に変化があった点をいくつかご紹介します。

 
  •  世の中に完璧な社長はいない。いい社長もいれば、悪い社長もいる
  •  IT会社の社長の仕事は、IT技術よりも人事、会計、財務、総務の揉め事がほとんど
  •  社長とはいっても、思ったほど自由でない。(自分で縛っている部分もあるが)
  •  社長の責任は経営であり「経営者は、経営しなければならない」が、しなくてもいい
 

3.社長の責任
 話は変わりますが、「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」が経済産業省から発表されました。これは、自分の身は自分で守る!つまり、何かあったときに国が守ってくれるとか、保険が守ってくれるわけではないよ、と書いてあると理解してます。

 

 セキュリティ技術者から社長になった者の視点からすると、経営者の責任として、お客様を守る、事業を守る、そのためにセキュリティレベルを上げていくということを他人に頼らずにやっていくことが求められる時代に変わった、という象徴だと思います。

 

Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

John F. Kennedy
 

4.社長人材の不足
 実際、社長という役職の人は日本に何人くらいいるかというと、法人の数(※2)だけ社長がいると仮定すると、260万人くらいいると考えられます。これは、情報セキュリティ人材の26万人(※3)の約10倍に当たります。

 

 情報セキュリティ人材が不足しているといわれておりますが、私の意見は、IT技術者、特にセキュリティ技術者から社長になろうという気概を持つ人材を増やすべきと考えます。CEOを目指さない人がCIOやCISOになれるでしょうか?出口が詰まっている職種に、子供たちの将来の希望が持てるでしょうか?

 

 今の世に求められるグローバル化、デジタル化に対応した経営を実現するためには、失礼ですが、現役の経営者の方々にIT技術、セキュリティの知見を持っていただくより、それらを日々おこなっているIT技術者、セキュリティ技術者の方々に経営者を目指していただく方が現実的だと考えます。

 

 私のような者でも社長になったのですから、是非、読者の皆様に社長を目指す気概をもっていただき、IT技術者やセキュリティ技術者が、子供たちのあこがれる職業の一つになってもらいたいと願っております。

 

※1 : 第一生命 「大人になったらなりたいもの」
http://event.dai-ichi-life.co.jp/campaign/minisaku/otona.html

※2 : 国税庁 「平成26年度分「会社標本調査」調査結果」

https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/kaisha_hyohon/index.htm
※3 : IPA 「情報セキュリティ人材不足数等に関する追加分析について」
http://www.ipa.go.jp/files/000040646.pdf
 

※記載内容は執筆者の知見を披露されているものであり、著作権は本人に帰属します。