2024年サイバーセキュリティ月間の寄稿コラム

産官学の新しい連携で取り組む
国立高専サイバーセキュリティ人材育成事業

高知工業高等専門学校 ソーシャルデザイン工学科
赤松 重則

1.この取組の経緯、概要を教えてください。

 独立行政法人国立高等専門学校機構(以下、国立高専機構)では2016年からサイバーセキュリティ人材育成事業を開始しました。2020年からはCOMPASS5.0 高専発!「Society5.0型未来技術人財」育成事業のサイバーセキュリティ分野として取り組みを展開しています。木更津高専と高知高専が運営校となり2023年12月にサイバーセキュリティ教育推進センターを国立高専機構に設置しており、2024年度からは同センターを拠点に活動していきます。

サイバーセキュリティ人材育成事業の経緯

2.取組の特徴、ユニークな点を教えてください。

 高専は、大学の教育システムとは異なり、社会が必要とする技術者を養成するため、15歳から5年間の早期一貫専門教育を行う高等教育機関です。
 非情報系分野の学生も含む全ての高専生には、体系的にセキュリティ知識を身につけたプラスセキュリティ人材育成に取り組みます。情報系の高専生にはサイバーセキュリティ専門技術者として必要となる高度な技術を持ったトップ人材育成に取り組みます。トップ人材の中でも上位1%をトップオブトップス人材として成長できるように、KOSENセキュリティコンテストの開催やトップオブトップス講習会の実施などに取り組んでいます。

育成する人材像
 国立高専機構は日立製作所、日本電気(NEC)、さくらインターネットと包括連携協定を結んでの協力の他にも、多くの民間企業、業界団体、大学、官公庁の協力を得ながら本事業に取り組んでいます。企業や官公庁からは実務家教員として高専の授業に講師を派遣していただくことにより、講師の方のスキルアップ・リスキルに関するキャリアアップ支援となりながら、学生達は最先端のサイバーセキュリティ技術に関する講義を受けることができます。今後はサイバーセキュリティ教育推進センターが中心となって、この取り組みを継続・発展させていきます。

サイバーセキュリティ教育推進センターの今後の連携取り組み

3.難しい点、苦労しているポイントを教えてください。

 2023年度で事業予算が終了となり、人材育成に関するエコシステムの構築が必要となります。サイバーセキュリティ人材確保という国家的課題について、産官学を超えて金融業界などに理解を得ながら、教育リソースを継続的に維持・更新できる体制づくりが今後の課題と考えています。

4.実際に取組に参加された方の声

 (高知工業高等専門学校 ソーシャルデザイン工学科 情報セキュリティコース5年 小松なごみ)
 学生最後の夏休み、私は「K-SEC CAMP FOR GIRLS in KISARAZU」に参加してきました。本イベントは、これまで参加したイベントのような「ハンズオンに注力した高専らしい密度の高い学び」とは少し異なり、企業見学や社員・学生との交流を交えた幅広い内容となっていました。そんな充実した2日間の中で印象に残っていることは、女性社員との交流にて学生からの止まらない質問に全て本音で回答いただけたことです。内定が決まり、仕事に対する不安が大きくなる中、女性社員の話にはとても励まされました。
 本イベントに参加し、数少ない女性のエンジニアとして何かしたいと思い、さっそく内定先に出前授業の提案をしています。これは今回に限らず、K-SECのイベントはどれも内容が濃いもので、毎回刺激を受け、その度に自分の中で新しい目標ができます。そんなきっかけと学びを与えてくれる本イベントに参加できたことをとても嬉しく思います。

高専女子学生向けK-SEC CAMP FOR GIRLS in KISARAZUワークショップの様子

5.最後に、コラムを読んだ方にメッセージをお願いします。

 サイバーセキュリティ教育推進センターはサイバーセキュリティ人材育成を目的として、地域SECUNITYの推進などにも取り組みながら、全国高専へ高度な教育実践の展開などを通して人材育成を推進していきます。