2023年サイバーセキュリティ月間の寄稿コラム

TOP 2023年サイバーセキュリティ月間 2023年サイバーセキュリティ月間の寄稿コラム 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)産業サイバーセキュリティセンター事業部人材育成グループ 佐藤 優佳

2023年サイバーセキュリティ月間の寄稿コラム

1.この施策の趣旨・目的を教えて下さい

 近年、社会インフラ・産業基盤に物理的なダメージを与えるサイバー攻撃が増えてきています。このようなサイバー攻撃に対する防護力を強化することを国家全体の課題として捉え、IPAでは2017年から中核人材育成プログラムを提供しています。
 中核人材育成プログラムとは、産業界のサイバーセキュリティ対策の強化を目的とし、社会インフラ・産業基盤を担う事業者においてセキュリティの観点で中核を担う人材(中核人材)を育成するため、テクノロジー(OT※・IT)、マネジメント、ビジネス分野を総合的に学ぶ1年間のフルタイムトレーニングです。
※OT:Operational Technology(制御技術)

2.具体的にどんなことが学べる・実現できるのですか

 本プログラムは1年間を大きく4つの期間に区分して実施します。

  1. ① 「プライマリー」:OT・ITセキュリティを中心に座学形式で学ぶ
  2. ② 「ベーシック」:以下の3分野を基軸に実践的な演習を実施
    • 防衛技術・ペネトレーション手法:模擬プラントを用いてサイバー攻撃に対する防御技術の演習等
    • OTインシデント対応・BCP:安全性と事業継続性を両立するOTインシデント対応等
    • ITセキュリティ:OTセキュリティ実現のためのIT設計等
  3. ③ 「アドバンス」:前述3分野に1分野を追加し計4分野から2つ選択。より高度な講義・演習を実施
    • DXセキュリティ・国際標準:AI・IoT・クラウド、国際標準・ガイドライン等の活用のための演習
  4. ④ 「卒業プロジェクト」:受講者自身が所属企業や業界の課題を設定し、その解決に向けた企画を推進

 以上テクノロジー分野の他、ビジネスマネジメント、倫理や海外機関との連携トレーニングもあります。
 これらを1年間経験することで、知識面・技術面ともに高度なスキル及び人脈を有しプロジェクトを推進する力を備えた中核人材として成長することができます。

3.実際にどのような成果が上がっていますか?

「習得した知識やスキル、構築した信頼関係を活用し、多方面で活躍」
 開講から5年間で300人以上の方が本プログラムを修了しています。
 自社における成果として、セキュリティポリシーや対策の見直しなどの各種検討の推進力として活躍されています。また、サイバー攻撃は1社への攻撃が他企業にも影響を及ぼしかねませんが、同期生や講師陣、修了者コミュニティ「叶会」(OB会)等、これまでに培われた信頼関係に基づく情報共有により、自社システムへの影響を判断し対応されています。
 業界や社会に対する成果として、「卒業プロジェクト」では受講者がご自身の業界の理想と現状のギャップを分析し、様々な取り組みにより解決を図れるよう努めています。一部プロジェクトはIPAのWebで公開しておりますので是非ご覧ください。
 修了者は、様々なセミナーや講演に登壇・参加し、本プログラムで得た知識を発信しています。皆様のご活躍についてはICSCoE REPORTもご参照ください。

4.どんな人に参加してほしいですか?

「日本のセキュリティを担う人材としての活躍を期待します」
 本プログラムの講師はサイバーセキュリティ分野を最先端でけん引する方々で、受講者の学びたいという期待に応え、様々な学習の機会を提供しています。能動的に学び、吸収した知識を日本のサイバーセキュリティ能力の向上に寄与いただける方に参加いただきたいです。
 また、多くの修了者が挙げる本プログラムの良かった点として、「幅広い業界や年齢、立場の方々と1年間学び、人的ネットワークを形成できること」があります。同期生のみならず講師陣や修了者と積極的にコミュニケーションをとり中核人材としての力をつけ、日本のセキュリティを担う人材としてご活躍いただく方の参加を期待します。