東京2020大会の対策を振り返る

TOP 2022年サイバーセキュリティ月間 東京2020大会の対策を振り返る 東京大会の次のステージへ~課題一つ一つに向き合う~

東京2020大会の対策を振り返る

東京大会の次のステージへ
~課題一つ一つに向き合う~

内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局
前 参事官 山城 瑞樹

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、1年の延期を経てコロナ禍の中で開催されました。延期とコロナ禍という環境が、東京大会に与える影響は大きく、サイバー攻撃についてもどのようなものになってくるのか不透明感がありました。攻撃者にとっては準備時間ができ、より巧妙化した攻撃になるのではないか、海外から一般観客を入れない分、海外からの攻撃が増えるのではないかなどの話題を思い出します。

 セキュリティ対策全般については、東京大会開催に向け、政府機関を中心とした大きな枠組みの中で官民挙げて何年も前から取り組んできており、課題を一つ一つ乗り越えて準備を進めてきました。中でもサイバーセキュリティ対策については、過去大会でのサイバー攻撃の状況等を踏まえた取組に加え、延期とコロナ禍という難題に対してもその枠組みの下、関係機関・組織・企業がそれぞれの役割をしっかりと果たせたのではないかと考えています。

 延期後、国内外でランサムウエアの被害が多く目につき始め、これがサイバーセキュリティ対策担当者の気がかりの一つとなり、危機感は一層高くなっていました(先月公表された国内で警察に届けられたランサムウエアの被害件数は、2020年下半期21件、2021年上半期61件、2021年下半期85件と増加傾向でした。)。このような情勢下で、サイバーセキュリティ対策のみならずコロナ対策として、遠隔業務・保守の強化や拠点の分散化等の取組に当たった関係者のご労苦に頭が下がると同時に、これら課題一つ一つに丁寧に対処していただいたことで、大会の運営に影響が出ることなくサイバー攻撃を抑え込むことができたのではないでしょうか。

 様々な課題に向き合うに当たり、日本で開催されたラグビーワールドカップ2019等への対処経験が活かされていたと思います。競技開催中に私自身、ラグビーワールドカップ2019事務局に詰めさせていただいたことなどで2段階認証等の各種対策に触れることができ、この経験が東京大会へとつながっていました。
 今後、国内で開催されるG7サミット等の国際的に耳目を集めるイベントは、置かれている状況や環境がそれぞれ異なります。このため、イベントごとに活用するシステムや利用環境等を把握することは言うまでもなく、基本的な対策を疎かにせず、各取組を参考にするなどして不断の見直し等が肝要ではないかと思います。これからサイバーセキュリティに携わる皆さんのご尽力・ご活躍に期待しています。