東京2020大会の対策を振り返る
東京2020大会の対策を振り返る
サイバーセキュリティ対策は一人じゃできない
東京地下鉄株式会社
経営企画本部ICT戦略部 佐藤 晃一
東京2020大会の開催に向けて
東京2020大会は、新型コロナウイルス感染症が流行している不安定な世界情勢の中で、会場運営や周辺の警備など多くの大会関係者に支えられて開催されました。私は、その中でも表立って目立つことのない東京メトロのサイバーセキュリティ対策に取り組んだ社員の一人です。
東京メトロは首都東京を中心に、通勤や通学、観光などで多くのお客様が利用されている鉄道会社です。東京2020大会は、無観客開催となってしまいましたが、鉄道の使命は変わることなく、大会関係者含め、様々なお客様が安心してご利用できるように運行しなければなりません。そのため、鉄道におけるサイバーセキュリティ対策は重要な位置付けとなっており、開催地が東京に決定したときから準備を着々と進めてきました。
サイバーセキュリティ対策の取り組み
サイバーセキュリティは専門的なことだから、一部の担当者だけで対策をしているのかというと、それは違います。企業の一組織だけでは立ち向かえないほど、近年のサイバー攻撃グループは高度な技術力を持ち、手に負えなくなっています。東京2020大会では、組織委員会、大会の運営等に必要なサービスを提供する企業、内閣サイバーセキュリティセンターを始めとする政府機関、公的なセキュリティ関係機関等が協力して準備を進めたことにより、自信を持って開催できたと言っても良いのではないでしょうか。準備にあたっては、昼夜を問わずサイバー攻撃の警戒をしなくてはならないため、普段はサイバーセキュリティの担当ではない社員にも応援を要請するなど、体制構築の苦労はまだ記憶に新しいです。
東京2020大会におけるサイバーセキュリティ対策の取り組み
さて、ここからはサイバーセキュリティ対策で取り組んだことを一つ挙げてみます。それはインシデント対応訓練です。訓練は定期的に実施され、技術的な対応だけでなく、情報共有ツールを使用した所管省庁等との連携など、現実に近い環境で取り組むことができました。どんなに高度な防御システムを導入していたとしても「サイバー攻撃の被害は起きる!」と身構え、訓練で経験を積み重ねておけば、いざという時でも冷静に対応できるようになります。防災訓練と同じですね。
これからも持ち続けたい心がけ
サイバー攻撃は見えない相手と戦っている怖さがあります。そんな相手に何から手を付けてよいのか分からないと思う方も多いでしょう。しかし、サイバー攻撃は日々進化しており、立ち止まることはできません。過去よりも現在、現在よりも将来に向けて、サイバー攻撃の被害を減らせるように一歩ずつであってもサイバーセキュリティ対策を継続していくこと。そして、一人では立ち向かわず、周りの社員や公的機関と連携して取り組むことが大切です。