東京2020大会の対策を振り返る

TOP 2022年サイバーセキュリティ月間 東京2020大会の対策を振り返る デジタル化された大会を支えるーアスリート・世界中の観客・オリンピックの価値における成功のために

東京2020大会の対策を振り返る

デジタル化された大会を支えるー
アスリート・世界中の観客・オリンピックの
価値における成功のために

公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会CISO・
デジタル庁CISO 坂 明

 昨年2021年9月5日にパラリンピックが終わってから、早いもので5ヶ月が経とうとしています。既に東京大会も歴史になろうとしています。

 2021年12月8日に発表された国際オリンピック委員会のプレスリリースで、トーマス・バッハ同委員会会長は「東京2020大会は、アスリート、世界中の観客、そしてオリンピックの価値という観点から成功を収めた。デジタルプラットフォームにおいて280億回以上のビデオビューを記録し史上最も観戦された大会である東京大会は、真の意味で初のストリーミング大会となった。」とコメントされています。コロナ禍のため海外観客を受け入れることのできなかった東京大会は、初のデジタル化された、インタラクティブな、参加型の大会として最高の評価を得ることができました。

 このようなテクノロジーに支えられネットワークで世界中の人々とつながった大会においては、サイバーセキュリティはこれまでにない重要性を持つことになります。巨大なシステムを活用して多くの人々と接点をもって運営される大会は、守るべき資産やネットワークの数が膨大でその範囲は極めて広くなります。一方で、サイバー脅威を見ると、2018年に開催された平昌冬季大会においては、開会式に合わせたサイバー攻撃によって多くのシステムが破壊されました。2020年からは高度な標的型ランサムウェア攻撃が、エネルギーや医療など、サービスの中断が許されないような分野の組織をも狙うようになり、攻撃者は常に牙を研ぎつつ、弱みを持つ獲物を探している状態です。

 東京2020大会におけるサイバーセキュリティ対策について振り返ってみると、本当に多くの方々が力を発揮して下さったことを思います。セキュリティに対してポリシーを持ってアーキテクチャを構成し、強靱なシステムと組織を作り上げたこと。海外を含む多くのパートナーとOne Teamとなり、力を合わせて緻密なオペレーションを行ったこと。それでも、小さな穴から攻撃者が侵入してくるリスクは常に存在しています。その意味では、多くの方々が力を尽くし万全を期したことに敬意を表しつつ、それでもそれはその時点でのものであり、状況は常に変化していることを思うと、無事に大会を終えることができたのは僥倖であり、謙虚に感謝を捧げたいと思います。

 東京2020大会に関わった多くの方々にとって、この巨大なオペレーションを完遂したことは貴重な体験となったものと拝察します。日本として、この財産を未来に活かすための取組がNISCでも行われています。また、関わった一人一人の方々が、それぞれの持ち場で、得られた知見をタラントとして活躍されていることを有り難く思います。私自身も力を尽くしたいと改めて思っています。