東京2020大会の対策を振り返る

TOP 2022年サイバーセキュリティ月間 東京2020大会の対策を振り返る サイバーセキュリティ対策を東京大会のレガシーにしませんか?

東京2020大会の対策を振り返る

サイバーセキュリティ対策を
東京大会のレガシーにしませんか?

内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター
内閣企画官 雲田 陽一

 2013年、IOC総会で開催地が東京に決まったことを家族と一緒に喜んだのを覚えておりますが、まさか自分が東京大会におけるサイバーセキュリティ対策に4年以上も携わるとは思いませんでした。内閣官房に着任してからは本当に苦労が多かったものの、閉会式ではやはりジーンとくるものがあり、東京大会に関わることで様々な官民組織の方々と一緒にお仕事をさせていただいた経験は、私にとって一生の宝物です。

 着任後、過去大会で多くのサイバーセキュリティ事案が起きたことを知り、強い危機感を持ちましたが、最初の課題はリソース不足でした。しかしながら、多くの官民組織が優秀な人材を快く内閣官房に派遣してくれたことなどから、状況は徐々に改善していきました。また、今だからお話できますが、最初の頃は関係組織と激論になってしまうことが少なくなかったものの、何年もかけて一歩ずつ信頼関係を醸成した結果、最終的には緊密に協力・連携することができました。

 東京大会における取組も試行錯誤でした。例えば、東京大会を支える事業者等を対象にしたリスクアセスメントの取組では、途中から約300の組織が実施した結果について個別に助言させていただいたことが、対策の向上につながったのではないかと思います。また、事案の予防や被害防止のため、約2000名の関係者が使う情報共有システムを運用することで、迅速な情報提供を実現しました。関係組織の皆様が真摯に取り組まれたことは、東京大会とサイバーセキュリティへのひとりひとりの強い思いの表れだったと思います。

 コロナ禍で東京大会が延期されたことにより計画変更を余儀なくされ、例えば、リスクアセスメントを再度お願いさせていただきました。テレワークの急速な普及等により新たなリスクを考慮する必要があったためだったのですが、関係組織の方々が高いモチベーションで取り組まれていたように思います。

 東京大会における対策から得た知見やノウハウは、大阪・関西万博といった大規模国際イベントのみでなく、持続的な取組に活かすことが重要です。その際、サプライチェーン管理、クラウド等の新たなサービスにおける安全・安心の確保等の重要課題を踏まえ、対象領域を拡大するべきだと思います。また、これまで様々な国の政府関係者等とお話する機会がありましたが、東京大会における対策への強い関心と官民をあげた取組への高い評価がとても印象的でした。前回の東京大会のレガシーとして、新幹線や首都高を思い浮かべる人が多いと思いますが、今回の東京大会のレガシーとして、サイバーセキュリティ対策を思い浮かべていただけるようになれば最高です。