エンドユーザーに伝えたいデジタル社会のセキュリティ

写真_春日有理沙

NPO法人ICTメディア研究会おきらくごくらく 
理事長 春日 有理沙

  • 実施しているファミリー層向けの取組について教えてください。

    ICTメディア研究会おきらくごくらくは、神奈川県川崎市を拠点とし、子どもからシニアまで世代を問わず、講座・支援会・ボランティア育成、セキュリティ・リテラシー向上に関する活動を行っており、「こんなことが知りたい」という声に応えられる内容を常に意識しています。

    団体は「デジタルデバイド(情報格差)、デジタルトラブルをなくしたい」という気持ちから立ち上げ、対象はエンドユーザー(一般のかた)です。エンドユーザーは「セキュリティは難しい」と思い込んでいるかたが多く、年齢・世代の区別なく「わかりやすく・楽しく」伝えることで、トラブルからの回避、リテラシーを日常に取り込んでいただきたいと考えています。法人名に「おきらくごくらく」を入れたのは、エンドユーザーが、おきらくに情報収集できて、ごくらくなデジタルライフを送れるようにサポートする、という強い意思があったからです。

    ICTメディア研究会

  • 取組の特徴、ユニークな点を教えてください。

    活動の幅を広げるための方法を模索していたとき、コロナ禍をきっかけに、地域の市民館から、デジタルサポートができる「ボランティアを養成する講座」を展開する機会をいただきました。興味はあるが、自分がどれくらいできるのか不安で1歩を踏み出せなかったかた、活動の場を求めておられたかたが集い、講座の修了生が「デジタルサポートの会」という市民チームを立ち上げました。その後、市民自主企画などの制度を利用して「支援会」を開催し地域密着の活動をしています。現在のメンバーは約40名を越え、2024年度末で修了生が、6期生になりました。

    当団体が実施している養成講座は、デジタルサポートをするときに大切な「ヒューマンスキル」が主軸となります。「教えない、伝える伝道師になる」「知らないことは悪くない、知ればOK」「忘れちゃうから何度でも」など、実は日常生活でも役に立つと評価をいただいています。また、話し方、声の出し方、何がわからないのかわからないかたへの対処など実践的な内容を重視しており、「デジタルサポーターの養成講座」として独自の形ができあがってきたと考えています。

    デジタルスキルは独学可能です。まずは自分の興味から掘り下げてみることから始めましょうとお伝えし、支援会テーマを想定した勉強会などでスキルアップをサポートしています。

    当団体がサポートしている支援会は現在「トラブル0」を更新中で、誇らしく思っています。
    来場者からの「わかりやすかった」「次回はいつ?」「今度は○○も知りたい」などのアンケート結果は、チームとして、ボランティアさんやわたしたちの大きな満足感に繋がっています。

  • どんな方に利用してほしいかを教えてください。

    養成講座は、年齢・職業・デジタルスキルに関係なく参加可能です。講座の中で、活動への具体的なイメージを持っていただけるように支援会の見学、先輩ボランティアのお話なども取り入れています。

    また、サイバーセキュリティ月間にあわせて、一般財団法人草の根サイバーセキュリティ推進協議会(Grafsec)様より助成いただき、エンドユーザー向け講座を複数開催することが可能となりました。募集は締め切っておりますが、開催前から「毎月こういう講座をやって」という声をいただき、「エンドユーザーからエンドユーザーへ伝える場所」が求められていることを実感しました。これからもこの姿勢を継続していきます。

  • その他、今後の展望や取組に参加した方の感想などがあればお願いします。

    まず、現在の活動を継続し、おとなのかたには「自分のデジタル環境を管理する」という取り組みを強化していく予定です。契約内容、使っているアプリの種類がわからない、など「誰かにやってもらっている」かたが多く、トラブルが発生したときに大混乱になります。自分で管理することで、トラブル抑止、機種変更も簡単になり、基礎知識のスキルアップが見込め、最終的にはデジタル終活につながるという多角的な取り組みです。もちろん「楽しく」が大前提です。そして「子どもを守る」取り組みも継続予定です。

  • 最後に、コラムを読んだ方にメッセージをお願いします。

    情報は簡単に手に入ります。しかしそれを鵜呑みにすることの危険性を強く意識していく必要性を感じています。「知って考える」ことでトラブルの回避率は格段にあがります。

    リアルな現実社会でダメなことは、ネット社会でもダメです。
    「リアル社会+ネット社会=デジタル社会」
    という世界にわたしたちが生きていることを、今1度考えてみていただきたいと思います。

    ICTメディア研究会02